病院案内

人生の最終段階における適切な意思決定支援に係る指針

 当院では、平成30年に厚生労働省が策定した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を規範として、「人生の最終段階における適切な意思決定支援に係る指針」を作成し、これに則り、多職種による医療・ケアチームで患者さん・ご家族に対する意思決定支援を行うように努めています。

1基本方針

 人生の最終段階を迎えた患者さん・ご家族等と医師をはじめとする医療従事者が、最善の医療・ケアを作り上げていくため、患者さん・ご家族等に対し適切な説明と話し合いを行い、患者さんご本人の意思決定を基本とした医療・ケアを進めます。

2人生の最終段階における医療・ケアの在り方

  1.  医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受けるご本人が医療・ケアチームと話し合いを行い、ご本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則です。
     また、ご本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、ご本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、ご本人との話し合いが繰り返し行われることが重要です。
     さらに、ご本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、ご家族等の信頼できる方も含めて、ご本人との話し合いが繰り返し行われることが重要です。この話し合いに先立ち、ご本人は特定のご家族等を自らの意思を推定する方として前もって定めておくことも重要です。
  2.  人生の最終段階における医療・ケアについて医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を元に慎重に判断すべきです。
  3.  医療・ケアチームにより可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、ご本人・ご家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行うことが必要です。
  4.  生命を短縮させる意図を持つ積極的安楽死は、本指針では対象としません。

3人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続き

    (1)ご本人の意思の確認ができる場合

    1.  方針の決定は、ご本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明を行います。そのうえで、ご本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえたご本人による意思決定を基本とし、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして方針を決定します。
    2.  時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、ご本人の意思が変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、ご本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるよう支援を行います。このとき、ご本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、ご家族等も含めて話し合いを繰り返し行います。
    3.  このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておきます。

    (2)ご本人の意思確認ができない場合
     ご本人の意思確認ができない場合には、次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行います。

      1.  ご家族等がご本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、ご本人にとっての最善の方針をとります。
      2.  ご家族等がご本人の意思を推定できない場合には、ご本人にとって何が最善であるかについてご本人に代わる方としてご家族等と十分に話し合い、ご本人にとっての最善の方針をとります。
         また、時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行います。
      3.  ご家族等がいない場合及びご家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、ご本人にとっての最善の方針をとります。
      4.  このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくものとします。

      (3)多職種および複数の専門家からなる話し合いの場の設置(臨床倫理コンサルテーションチーム、倫理委員会への諮問)
       上記(1)及び(2)の場合において、方針の決定に際し、

      • 医療・ケアチームの中で心身の状態等により医療・ケアの内容の決定が困難な場合
      • ご本人と医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容について合意が得られない場合
      • ご家族等の中で意見がまとまらない場合や、医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容について合意が得られない場合

       等については、複数の専門家からなる話し合いの場を別途設定(臨床倫理コンサルテーションチーム、倫理委員会への諮問)し、医療・ケアチーム以外の者を加えて、方針等について検討及び助言を行います。

      (4)認知症等で自らが意思決定することが困難な患者さんの意思決定支援

       認知症等で、自らが意思決定をすることが困難な場合は、厚生労働省の作成した「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」を参考に、できる限り患者さんご本人の意思を尊重し反映した意思決定を、ご家族および関係者、医療・ケアチームが関与しながら支援します。

      (5)身寄りがない患者さんの意思決定支援
       身寄りがない患者さんにおける医療・ケアの方針についての決定プロセスは、患者さんの判断能力の程度や入院費用等の資力の有無、信頼できる関係者の有無等により状況が異なるため、患者さんご本人の意思を尊重しつつ厚生労働省の「身寄りのない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を参考に、介護・福祉サービスや行政の関わり等を利用して、意思決定を支援します。

      4参考資料

      1. 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスにおけるガイドライン」
        厚生労働省 改訂 平成30年3月
      2. 「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」
        厚生労働省 平成30年6月
      3. 「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」
        平成30年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)
        「医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究」班 2019年5月

      令和6年5月21日 倫理委員会承認