はじめに
食生活、運動、休養、喫煙、飲酒などを指して生活習慣といいますが、満腹になるまで食べたり、油や塩分を摂り過ぎたり、お酒の飲み過ぎや運動不足、睡眠不足、ストレスをためるといった生活習慣の乱れは、短期間ではそれほど影響を及ぼしません。ところが、10年、20年と続けていくうちに肥満になり、血糖値、血圧、中性脂肪、コレステロール値も高くなって、生活習慣病である脳卒中や心臓病を発症してしまいます。
生活習慣病の一つである心臓病は、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)や心房細動、心室細動、房室ブロックなどの不整脈疾患、生まれつき心臓に問題がある先天性心臓病(心房中隔欠損、肺動脈狭窄など)、心筋・心膜の病気、心臓弁膜の病気などに分類されます。心臓病の中で主たる死亡原因を占める虚血性心疾患の原因は動脈硬化であり、生活習慎病との関連が強く指摘されています。動脈硬化の危険因子としては、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、喫煙、糖尿病の4つがあげられ、さらにストレスと肥満を加える場合もあります。
虚血性心疾患の1次予防
普段から満腹になるまで食べたり、油や塩分を摂り過ぎたりしないように心がけ、適度な運動と十分な休養を取り、ストレスをためないようします。酒は百薬の長ですが飲み過ぎは体に良くありません。喫煙は百害あって一利なしと言われ、ご自身が喫煙を止めることによって動脈硬化の危険因子を取り除くことが可能です。
また、健康診断や人間ドックを定期的に受診し、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病になっていないかを確認するのもよいでしょう。もし、それらになった場合には、きちんと治療を行い血圧やコレステロール値や血糖値をコントロールすれば、動脈硬化の進行を遅らせ、虚血性心疾患になりにくいことがわかっています。
心臓に栄養や酸素を送っている動脈は、冠(かんむり)のように心筋(心臓の筋肉)を覆っていることから、冠(状)動脈と呼ばれます。この血管の中が動脈硬化や血管のけいれんで狭くなり、十分な量の血液が心筋に行き渡らなくなったとき、心臓は虚血(血液不足)状態となり、胸の痛みや絞めつけられるような感じが起こります。その強さはさまざまですが、まれに自覚症状に乏しく、心電図や心臓の超音波検査で発見される場合もあります。
狭心症では、細い血管の中を血液が流れており、不十分ながら心筋に供給されていますが、冠動脈が詰まってしまった心筋梗塞では血液が心筋に届かず、心筋の細胞が死んでしまいます。
狭心症に対しては薬による治療や風船やステント(筒状の金網)を用いて血管の狭い部分を広げる拡張手術が行われますが、重症の場合には別の血管を冠動脈につなぐバイパス術が行われる場合があります。心筋梗塞では心筋が死なないようにできるだけ早くこれらの治療を行う必要があります。胸の痛みや絞めつけられるような症状を自覚した場合には、虚血性心疾患を疑い精密検査が必要なため、お近くの医療機関を受診してください。
虚血性心疾患の2次予防
もし、狭心症や心筋梗塞になってしまい、先ほどの血管治療を受けた場合には、その後は血液の中に含まれる血小板という成分のカを抑えて血液をサラサラにする薬を飲み続けることになります。それに加えて、これまでより一層血圧やコレステロール値、血糖値を厳格にコントロールする必要があります。そうすることは動脈硬化の進行を予防し、再び虚血性心疾患を起こしにくくすることにつながります。
最後になりますが、虚血性心疾患の1次・2次予防では、医療機関の受診やお薬の治療を継続するだけでは不十分であり、皆さんの予防に対する意識と生活習慣を見直し、それを改善することが何よりも大切です。
皆さんのこれからの健やかな生活の一助になれば幸いです。