医師の初期臨床研修を義務化するにあたり、厚生労働省では、初期臨床研修の理念を「臨床研修は、医師が医師としての人格をかん養し、医師として将来専門医とする分野にかかわらず、医学および医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷または疾病に対応できるよう、基本的な臨床能力を身につける」ものであるとしました。また、理念実現のために、その核となる研修科目と研修期間が定められました。
兵庫県立西宮病院では、厚生労働省が示した「新たな医師臨床研修制度のあり方について」に沿って、当院の特長を生かした「兵庫県立西宮病院初期臨床プログラム」を策定し、独自の研修を実施しています。また、新研修制度も運用を開始して11年が経過し、研修医の要望を踏まえてカリキュラムの改善を図っています。
当院は、神戸市東部から尼崎市西部及び宝塚市、伊丹市に及ぶ人口200万人あまりの住民を擁する医療圏域の中核医療機関で、一般治療の実践と進化を図るとともに、救命救急センター、地域周産期医療センター、腎疾患総合医療センター、新生児センター(NICU)などのセンターを併設し、高度医療の実践にもあたっているのが大きな特色です。
また、阪神淡路大震災の経験と教訓により、初期治療の重要性、制約条件下の医療対応を身をもって修得するとともに、病診連携、病病連携の意義・重要性を十二分に理解した医療スタッフ陣を揃えています。
こうした立地、特色と経験を踏まえ、当院の初期臨床研修制度は、日常診療で頻繁に遭遇する病気や病態に適切に対応できるよう、プライマリケアの基本的な診療能力(態度、技能、知識)を身につけるとともに、間近に迫った超高齢者社会に備え、救急医療、総合診療の強化を念頭に入れた研修を主眼としています。
またあわせて、救急蘇生と初期治療の重要性を考え、内科系指導医、外科系指導医、救命救急センター指導医、産婦人科指導医と小児科指導医が当直を行う特長ある当直体制を生かして、当院での研修期間中は、常に当直業務研修を経験できるようになっています。
指導医とともに当直業務を行う中で、救急医療と救急蘇生の基本手技を会得することができ、合わせて、小児救急医療の基本や産婦人科救急医療の基本を習得することが可能です。
こうした研修を通じて、厚生労働省が掲げる初期臨床研修の理念を真に満たした医師の養成が可能になると考えています。
当院では、この目標達成のため、指導体制はマンツーマン方式を原則とし、上級医師が下級医師の指導監督を行う、いわゆる屋根瓦方式や指導医による集団指導の方式も併用し、研修期間中は、内科、外科系、救急科、小児救急、産婦人科など全科で指導医とともに当直医療に従事し、プライマリ治療に必要な知識と経験の一体化を図ることが可能です。
臨床研修センター長
中川 雄公